月報付録 2008年6月1日発行   

   「東海教区・静岡教会前史」

   ELC宣教師の軌跡(54)

「教会合同準備 B

 

引き続き、ルーテル四教会の合同に向けての歩みを記す。

神学校問題で大合同計画の先行きも困難を覚えることが誰の目にも明らかになりつつあった、一九六三年春、三月

四日、東京の鷺宮の神学校にて第二回の合同委員会が開催された。その席上、近畿ルーテル教会の代表石村昭から、二月二十四日に行われた常議員会決議文が次のように公表され、出席者に配布された。

 「近畿福音ルーテル教会は、昭和三十七年七月八日の臨時総会において、新しい日本福音ルーテル教会への合同を決議し、その準備を常議員会に委任されたが、その後の合同準備において決議当時の基本原則(昭和三十七年七月八日の臨時総会資料、教会合同に関する経過報告、()前記七項目のこと)が認められていない状態にあるので、常議員会はその責任を負うことができず、準備活動を中止し、来る三十八年度定期教会総会にこれを報告し、総会の決議を待つものとする」

 このような近畿福音ルーテル教会の決議文に対して、次のような種々の意見が合同準備委員会で述べられた。それをまとめるとこのようになる。

@    近畿福音ルーテル教会の常議員会が、七つの項目を「基本原則」と称え、さらにこれらが「その後の合同準備においてみとめられない状況にある」と言う一方的な判断は委員会として認められぬことであること。

A    七項目については、合同のよりよき実をあげるために、引続き協議を重ねつつある現状であるのに、自ら一方的判断によって合同についての責を負うことができないとする決議はうなずけないこと。

B    日本におけるルーテル教会の合同は、諸外国のルーテル教会及び国内のキリスト教界においても注目される教会史的な意義を持つ出来事であるから、一度決議した合同をやめようとする場合には、それだけの理由を明確にして、内外に公開すべきであること。

C    教会合同に責を負い得ないという直接の、そして最大の理由が、神学校問題であるとしても、按手を受けて教師となるためには、教師試験を等しく誰でも受けなければならないということで解決するのではないかということ。

D    近畿ルーテル教会では、総会の決議を常議員会が途中で曲げてしまう程の権限があるだろうかということ。

E    七項目についての解釈の相違(<>例えば第二項及び第七項の「当分の間」とは、十年位、あるいはもっと長い期間であるとの近畿の解釈に対して、それはおそくても五年以内出来るだけ早く理想的な状態になるまでの臨時措置であるとする解釈の相違)は、合同不参加の決定的理由とはなり得ないこと。その背後にあるのは、私たちに対する強い不信感ではないかということ。

F    信仰と合同の理念において一致したうえでの合同準備が具体的なことがらを問題とする場合、それを対立的問題とするのでなくて、共同の問題としてとりあげ、話し合いを重ねて問題点を見出すようにすべきではなかったということ。

 

こうして近畿福音ルーテル教会は、合同後、東京にある神学校と神戸にある神学校を同等の神学校として扱う事の問題で、合同から後退することを表明した。

合同から撤退した近畿福音ルーテル教会が明らかになった、三月四日の午後、東海福音ルーテル教会、スオミ教会、それに日本福音ルーテル教会の準備委員がオブザーバーを除いて、別に集り、次の内容を協議し、今後の合同の創立総会実現に向けて細かい手順と役割を相互に確認した。

@    合同総会は、新宿市ヶ谷

本村町十三の救世軍エバンゼリン・ホールを会場として開くこととし、岸、坪池、河島の三氏で交渉に当たる こと。

A    憲法規則については、改めて検討を加えて修正し、一日も早く印刷して全教会に送付すること。

B    憲法規則の最終案を仕上げるために、次ぎの者が三月六日神学校に集る。山内()、河島、田坂、ハドル、ソレンソン、坪池。

C    創立総会準備委員を、坪池()、石居、岡田、ジュンスルード、マクマフィー、浜田の六氏に委嘱する。

D    第五回委員会で申合わされているリーフレット刊行は一応中止するが、パンフレットは総会以後発行する。

E    創立総会において機関紙委員を選ぶこと。

F    合同後の教区区分は総会で決定する。

G    創立総会より第一回定期総会までの一年間の教会行政は、合同準備委員が運営委員となってその責に当たることを創立総会に提案する。

H    合同後の教区規則については、準備委員会は創立総会前に検討しないこと。

I    協力幹事(宣教師)を出来るだけ早く推薦すること。

J    第一回定期総会後の予算案の大綱を作成して、創立総会に上程すること。そのために、坪池()、山内、岩井、丸山、浜田の五氏に原案作成を依頼すること。

 

 東海福音ルーテル教会、日本福音ルーテル教会及びスオミ教会だけによる合同準備の会合が四月四日、開かれた。

 そこで、最終的な創立総会のプログラム案が検討された。準備委員会の構成と役割も次のように決定した。

 委員長  岸 千年

 副委員長 河島亀三郎

 書 記  田坂惇巳

 英文書記 ソレンソン

 事務局長 坪池 誠

 さらに、翌々週の十八日、日本福音ルーテル教会の市ヶ谷学生センターで開き、創立総会後の合同教会を運営する委員会の構成を次のように定めた。

(旧)日本福音側

八人(邦人教師五 宣教師二 信徒一)

(旧)東海側

四人(邦人教師二 宣教師一

信徒一)

六日後の四月二十四日、最後の、通算して十四回目の準備委員会を文京区林町の東海福音ルーテル教会の小石川教会で開催し、合同に関する協約事項を東海福音ルーテル教会と日本福音ルーテル教会を確認し、次のように纏め、相互に協約書を交換した。

ここに協約書の全文を記しておく。

  前  文

一、日本福音ルーテル教会と東海福音ルー・テル教会(以下両教会とい

  う)は合同して新たに日本福音ルー・テル教会を形成するに当り、

  次の協約を結ぶ。

二、両教会はこの協約を前提として合同する。

三、この協約は合同創立総会に先んじて両教会の代表者が相互に署名捺印して交換し、合同創立総会に報告して承認を受けるものとする。

 

   本  文

 

四、教区の形成

 @日本福音ルーテル教会は、(新日本福音ルーテル教会にあっ   て、三つの教区を形成する。

 A東海福音ルーテル教会は、(新) 日本福音ルーテル教会におい て、そのまま一個の東海教区を形成し、その憲法、規則を教区  の憲法、規則に切りかえて実施する。

 B日本福音ルーテル教会東海部会所属の四つの教会は機の熟した   とき、正当な手続きを経て、(新) 日本福音ルーテル教会東海   教区に編入する。

 C東海福音ルーテル教会に所属して東京地区にある三つの教会  は、正当な手続きを経て、(新)日本福音ルーテル教会東教区に  編入する。

 D(新)日本福音ルーテル教会と各個教会との連絡並びに教師の  任免配置転換に関する事項は教区を思して行なう。

五、支援団体との関係、並びに教会運営費の分担

 @東海福音ルーテル教会とAIC日本伝道部との間に結ばれた特  別協約は存続する。

 A日本福音ルーテル教会が従来各支援団体と結んでいる協約は存   続する。

 B(新)日本福音ルーテル教会事務局の費用分担については、東  海教区に関連があって、(新)日本福音ルーテル教会内の他の  三つの教区に共通な事務処理に必要な費用の分担をする。

  その他共通の運営と瀬るものの費用についても、具体的な数字  に基づいて必要な責任を分担する。

六、既存並びに継続する事項

 @両教会が在来行なって来ている伝道活動、各種事業、並びに現  在両教会に所属する教師、伝道師の身分、待遇、並びに各種の  便益は互いに認める。

  継続処理中の事項で、第一回定期総会以前に完了したものにつ  いても同じである。事務職員または施設の従事員の処遇は第一   項に準ずる。

七、行政参与について

 @合同創立総会後、第一回定期総会に至るまでの行政は、現在の  合同準備委員会を、運営委員会に切りかえて行なうが、その構   成は次の如くする。

  日本福音ルーテル教会より選任されたもの八名、

  東海福音ルーテル教会より選任されたもの四名、計十二名。

 A所要員数を両教会はそれぞれ人選して運営委員会を組織し、要   員会に必要な役職を互選する。

 B第一回定期総会以後、東海教区からは教区長の外、教師、信徒−

  宣教師各一名を常議員会の構成中に加えることとし、教区長以.

  外の教師が、役員または局長の中に入らない時は、無任所常議  員として加わるものとする。但し第一回と第二回定期総会にお  いては、議長または副議長の何れか一名を東海教区から選出す   ることとする。

八、協約の修正または廃止について

この協約は時の推移と情況の変化によって、(新)日本福音ルーテル教会の運営上、修正、または廃止を要すと考えられるに至った時は、(新)日本福音ルーテル教会の常議員会と東海教区の常議員会は該当する事項について協議して、その処理に当る。

 以上の協約事項を互いに承認して、英訳文を添加して、ここに署名捺印して、後日のため調印者各一通を保有する。

  昭和三十八年(一九六三年)五月一日

 

この両教会で交わされた協約書に署名捺印したのは、東海福音ルーテル教会側は河島亀三郎とソレソン。日本福音ルーテル教会側は岸千年と山内六郎であった。

さらに、この協約書は合同創立総会の前夜、五月一日午後七時、市ヶ谷の学生に集っていた日本福音ルーテル教会の会員たちに公表された。