月報付録 2008年7月6日発行   

  「東海教区・静岡教会前史」
   ELC宣教師の軌跡(55)

    「合同創立総会」


合同の創立総会に向けての最終的手続きとなった、東海福音ルーテル教会と日本福音ルーテル教会との間での協約書が交された、一九六三年五月一日の、翌日の二日、東海福音ルーテル教会は市ヶ谷の学生センターの日午前十一時、市ヶ谷の学生センターのチャペルにおいて最後の実行委員会を行った。

実行委員会は協約書の交換をすませたことを報告し、合同後の教会の運営委員会に加わる者四人を指名し、それを臨時総会に推薦することを決議した。その指名は以下の通りである。

河島亀三郎 大柴俊和

浜田光行  ソレンソン

同日の午後三時半から東海福音ルーテル教会は臨時総会を開き、以下の内容を付帯決議し、新たに日本福音ルーテル教会を創立することを可決した。教師正議員二十名、信徒正議員二十名、他に準議員として十五名が出席し、以下の議事を行い、賛成多数で可決した。

一、新日本福音ルーテル教会の憲法、規則(案)に承認する。                                                                

一、東海福音ルーテル教会と日本福音ルーテル教会との間に結ぶ特別協約、両教会が署名した特別協約を承認する。

一、合同教会の運営委員として、実行委員会より推薦のあった四名の者を創立総会に推薦する。

一、東海福音ルーテル教会と日本福音ルーテル教会と合同して、新たな日本福音ルーテル教会を創立することを決議する。

日本福音ルーテル教会も同様に創立総会に先立ち、五月二日夕方までに、最後の総会を救世軍エバンゼリン・ホールにて終えていた。

同日、午後七時より、同ホールで以下のように合同礼拝と宗教音楽の集いが催された。                                                                     

午後七時〜七時五十分 

礼拝

 司会 山内六郎

 説教 アンダーセン博士LWF)   

 通訳 石田順朗

 聖書朗読と祈祷 大柴俊和

午後八時〜九時 合同記念音楽会

 

 説教は世界ルーテル連盟(LWF)に属し、ドイツ人のアンダーセン博士が行った。宗教音楽の夕べは、池宮英才氏を指揮者に、オルガン演奏や独唱など、多数の出演者が奉仕し、合同総会前夜にふさわしいプログラムが提供された。

創立総会が行われた救世軍のエバンゼリン・ホールは国電中央線市ヶ谷と四谷駅のほぼ中間に位置し、新宿に向った電車の窓から右側に見える白い建物であった。市ヶ谷駅から徒歩で約五分程度であった。

 念願の創立総会は五月三日()午前八時半より午後五時まで行われた。その日程は次の通りである。

五月三日 (金)

午前八時三十分〜九時三十分 登録

九時三十分〜十時 

開会礼拝  司会 岸井 敏

      奨励 平井 清

十時〜十二時 組織及議事

 合同経過報告及挨拶

 (合同する二団体の代表者)

 憲法、規則の採択 説明 田坂惇巳

 合同宣言文    朗読 田坂惇巳

 来賓祝辞

正午〜午後一時 中食

午後一時〜四時 議事

  第一回定期総会に到るまでの運営委員選任

四時〜五時 閉会礼拝

  司会  牛丸省吾郎

  立証者 ネルソン 教師 河田稔

  信 徒 池永春生 辛木多恵

      永田久雄 浅川剛毅

 

上記の日程に沿って、合同創立総会は開催された。

午前九時半より、東海福音ルーテル教会で初任牧師となった岸井敏が開会礼拝の司式を行った。ヨハネ福音書十七章二十節より二十六節までの聖句が読まれ、平井清が「一つとなるためである」と題してみ言葉を語った。

ついで、創立総会中の議長とし、山内六郎、書記として大柴俊和が選出され、議事に入った。

合同に到った経過報告は、岸千年が日本福音ルーテル教会を代表し、河島亀三郎が旧東海福音ルーテル教会を代表して行った。

岸は、「合同に到るまでの歩みが、ひとえに神の導きによることを強調し、合同後の教会は、単に組織が大きくなるというのではなく、聖礼典が正しく執行され、み言葉が正しく宣べ伝えられることに留意すべきこと」を特に強く説いた。

河島は、「宣教・伝道戦線が拡大強化され、自給精神が高揚し、信徒教職間の交わりの深化、さらには、各個教会の固有の特徴が一致の中に発揮されること」という四点から合同の意義を力説した。

合同に到る報告の後、両教会の教職と信徒の相互の紹介が起立して行われた。

合同憲法・規則の採択に入る前に、まず田坂惇巳が合同委員会を代表して、合同憲法・規則を説明すると共に、採択後、字句の訂正や修正が必要となった場合には運営委員会に附託することを提案し、承認され、全員起立をもって合同憲法・規則を承認した。

つづいて、田坂惇巳が内外に向けての、以下のような「合同宣言」を日英両国語で朗読し、拍手により承認した。

「『人の義とされるのは律法の行いによるのではなく、ただキリスト・イエスを信じる信仰による』ことを強く信仰の立場とするルーテル教会は、日本において宣教を開始して以来七十年の歳月を経た。

日本におけるルーテル教会諸団体は、宣教の歴史の長短はあるが、昭和二十八年(一九五三年)より信仰の一致を基礎として合同を目指し接渉を重ねた。

そして今日ここに旧日本福音ルーテル教会と東海福音ルーテル教会を形成することとなった。

我らの前途にはなお幾多の困難が横たわるとしても、勝利者である生ける復活の主キリストが我らに先立ち導き助けたもうことを固く信じるものである。

我らは信仰において、いよいよ団結し、わが教会に与えられた宣教の使命を果たすため、思いをあたらにして、一層努力せんことを決意する。

又、わが教会は我らと信仰を一つにし、志を同じうする教会が、われらの群れに加わることを希望する。

今、我らは主の栄光のあがめられんことを祈りつつ、溢るる感謝をもってこの合同を国の内外に宣告する。

昭和三十八年(一九六三年)五月三日

日本福音ルーテル教会合同創立総会

            」

 この後、合同を感謝して、、内海季秋、池田政二、ネービー師、浜田光行氏が感謝の祈祷を捧げた。引続いて、全員が起立して、讃美歌一六七番「かみはわがやぐら」を高らかに歌って、合同の決意を表した。

この合同創立総会に寄せられた祝辞は次の通り。

日本キリスト教協議会議長・武藤健

アウガスタナ神学校長(ドイツ)アンダーセン

インド・タミール、ルーテル教会監督マンガムの祝辞をクマレセン教授代読

LCA伝道局  ヴィクナー

LCA 婦人会 ケムブル

ALC議長及び外国伝道局長の祝辞をソレンソン代読

フィンランドルーテル教会 ワルトネソ

デンマークルーテル教会レトラーセン

北ドイツミッション ヘンシェル

ドイツ、ミッドナイト・ミッション フォン・ライシユビッツ

ノルウェイ伝道会 エークリ

近畿福音ルーテル教会 上野富雄

西日本福音ルーテル教会 鍋谷堯爾

日本ルーテル教団 フィリップス

これに対し合同教会を代表して本田伝書が謝辞を述べた。

このようにして合同が成立したことにより、合同準備委員会は解散し、第一回定期総会までは以下の「運営委員会」が、新教会の行政執行機関となった。

委員長  岸 千年

副委員長 河島亀三郎

書 記  牛丸省吾郎

会 計  浜田光行

英文書記 アルスドルフ

委 員  田坂惇已 内海季秋

大柴俊和 山内六郎

オルソン 川西 誠

ソレンソン

また、合同教会の機関紙「るうてる」編集委員として、次の諸氏が選出された。

主 事 石田順郎

委 員 岸井 敏 徳善義和

 

合同教会の事務局長には、坪池誠が引続き、選任された。

総会議事終了後、午後三時三十分より、牛丸省吾郎牧師司式による閉会礼拝を行い、讃美歌百九十三番の後、岸委員長の祝祷が行われた。

この閉会礼拝では、次の諸氏により、合同宣言への証言がなされた。

浜松教会  ネルソン師

大江教会  池永春生氏

婦人会連盟 辛木多恵氏

青年連盟  浅川剛毅氏

静岡教会  永田久雄氏

宇部教会  河田 稔師

この合同創立総会から一ヶ月を経て、六月、合同教会の機関紙『るうてる』に、運営副委員長となった河島は、「合同の見通し」と題して、次のような言葉を残している。

 「古いものと新しいもの。一方は既に日本伝道七十年の歴史を有している。他は近々十年余の歳月。この二つが合同したということには何かさまたげとなる要因があるだろうか。『古い』という意識にこだわりさえしなければ、何のさわりもありえないと私は思う。

 課題は多い、海外教会からの支援金を受け入れてゆく仕方と、そのお金の使い方、教区の自活という事の意義の糾明。それを合同教会(ナショナル・チャーチ)との関連で如何にして行くか。神学校は教会の心臓部分である。この神学校を大学に昇格する事は緊急を要する課題である。

 信徒を更に多く獲得してゆく方策の研究を怠ってはなるまい。そしてその中からもっとも多くの神学生をつのって行く事をわすれてはならない。

 警戒を要するのは組織や人事の面ばかりで心をうばわれて霊性の深みへ分け入ってゆく心づかいを忘れることである。教会から信仰をとりされば味を失った塩となる。

 この様な大切な事柄を一つ一つ処理して前進する所に新教会の使命があり、そこに新教会の中の一人一人にみなぎる努力の目標がなければならない。

 我々は最早二つではない。一体である。この一つの新しい教会は、更にまさる道を求めて、前へ前へと進まねばならない。そうすることが合同を生かすことだと思う。」

 さらに、合同教会の運営委員長となった岸千年は、同紙で「古きは過ぎ去った」と題して、全教会員に合同後の教会のあり方を訴えた。

 「合同はリフォーメーション(再形成)である。これはルターのリフォーメーション(宗教改革)に通じるのである。ここであらためて、新しい交わりの団体として、主の委託を実践して行かなければならない。それには、古きに死に、新しきに生かされる自覚を信仰のなかでもたなければならない。このとき、全人類のあがないのよきおとずれ、福音の宣教に新しい覚悟と勇気とをもって出で行くことができるのである。生けるみことばへの奉仕が新しい教会のなかでなされるときその結果はいうをまたない。三一の神のみ名がほめたたえられるのである。伝道、教育、社会福祉の各部門にそれぞれの任を受けている兄弟姉妹よ、神の新しい創造を信じて立とうではないか。そうすれば、キリストにおける協力体制が確立せられ、海の彼方にある兄弟たちにむくいることになるのではないだろうか。」