月報付録 2008年1月6日発行   

   「東海教区・静岡教会前史」

   ELC宣教師の軌跡(49)

「東海福音ルーテル教会創立総会

 

一九六〇年の新春の一月より、「東海福音ルーテル教会」を創設するための準備委員会が始動した。

そのメンバーは、O・ハンセンを委員長とし、クヌートソン、ジョンスルード、タング、それに四人の邦人牧師として、河島、池田、岸井、大柴。さらに、信徒から市山貞一、阿部長治の二人が加わり、一〇人で準備委員会は構成された。

一月二十六日、第一回準備委員会を開き、そこにボードの実質的機関であり、宣教師会そのものである「福音ルーテル日本伝道部」からの次の内容が提示された。

一、                           これ迄毎年一月に開いて来た日本伝道部の年次会議を今後は九月に開く。

二、宣教師の仕地も九月に定め、これを案として東海福音ルーテル教会の総会に提示し、その承認を得て実施する。

三、聖書学院、ルーテル・アワー、聖文舎、本郷学生センター、神学校に対する補助は当分の間日本伝道部が行なうが、その支配と経済管理は教会に移管する意向である。

四、東海福音ルーテル教会が採用しようとしている憲法、規則は喜びをもって賛成、承認した。

 五、日本伝道部の意志伝達は、伝道部の議長から教会の議長を通じて行なう。教会から伝道部への場合も同様である。」

こうして、一九五〇年の伝道開始と共に歩んできた「福音ルーテル日本伝道部」伝道部はもはや教会の主体ではなくなったのである。日本の教会の主体と主導権は日本の教会の下におかれることとなった。ボード・宣教師会と日本の教会とは、互いに独立し、対等で併存する相互関係がここに始まっていったのである。

教会の歴史の中で、画期的な年となった、一九六〇年の、聖書学院を卒業した伝道師及び神学校入学前の補教師の人事任命は次の通りであった。

補教師

近藤よし乃(名古屋・恵)三月退職

荒木優 補教師 浜松教会

紫垣四郎 板橋(主として児童福祉)

山本登志子  柴 田

天野宏志   田 原

村田てつ   岡 崎

岩崎美三生  半 田

目崎勢津子  清 水

牧田収子   常 滑

小松明    富 士

大石栄太郎  掛 川

神学校入学  中島 誠

神学校入学を志し、大学に入学した者

内田隆之、鈴木弘雄、竹内正一、川口

昨年中に地域別の検討会を開いて、制定する「憲法規則」に対する各教会の意見を集約し、四月に準備委員会はその最終案を作成し、それを再度地区別に説明会を開いた。

四月一日には、伝道開始十周年を記念する『聖霊の歩み』という記念誌が発行された。その内容は宣教開始からの十年間の歩みを物語るものであった。

口絵―写真

前をみつめて   シルダル

成長と約束の十年 オラフ・ハンセン

最初の十年間   ジョンスルード

初期の視祭旅行  ゴルドン・タング

大都会での伝道  ラッセル・サノデン

中都市に於ける伝道 ネルソソ

神学校−預言者の学舎 ハンセン

バイブル・キャンプ 岸井 敏

東海ルーテル聖書学院 ハイランド

文書伝道      スウェンサイド

学生伝道      フエグリ

思い出        西 恵三

協子とELC    池田政一

ELC伝道十年の思い 市山貞一

不思談な再会       鈴木 宏

追  想            大柴俊和

田原教会の歴史と発展  岡崎 馨  

農村とキリスト教     中島誠

静岡ルーテル・アワー・センター   岩辺頼春・早川あさ子

東海福音音ルーテル教会の憲法と規則     河島亀三郎

各教会の紹介           」

 

伝道十年の歴史をハンセンは「成長と約束の十年」と受けと、それを『聖霊の歩み』中で、このように要約している。

「東海地方に於ける伝道十周年を迎えて、これらの言葉が私共の確信を、適切に表わしております。「成長」と「約束」の二語が、十年問の経験を最も良く表わしております。一九四九年の一人の宣教師に始まって、現在福音ルーテル教会日本伝道部は七三名の宣教師を日本に任命しております。河島牧師を、最初の唯一の牧師としましたが、今は牧師四名、神学生九名、その他に十名以上の学生が、教職を志しています。最初は礼拝も東京の文京区一ケ所でしたが、

その後伝道が進み現在定期に礼拝式を開いている教会伝道所が、二十七ケ所になっています。一九五一年の復活祭に東京教会で洗礼を受けたグループが、最初の信者でしたが、今は信者総数七〇〇名を越えています。

教会の奉仕を目的として、青年男女を訓練するために、東京のルーテル神学校と協働する他に東海ルーテル聖書学院が設立されました。毎年クリスチャソ連が、キリストのために時と、カと、金銭を捧げる事を学んだ結果は、教会全体の霊的な成長と熱心の増大となりました。実に私共の『成長』は、典型的なからし種の成長(マルコ43132節)であったのです。」

それから三ヶ月後の七月八日、準備委員会は最終委員会を持ち、創立総会の準備に当たった。

その前の、六月一日付で発送された、静岡教会を会場で開催される創立総会の通知は以下のような文面であった。

「創立総会通知

 東海福音ルーテル教会創立総会を左記の通り開きますから、各教会または伝道所におかれては、憲法、規則の定めに従って代議員、または準議員をお送り下さるよう、勧案内申し上げます。

 昭和三十五年六月一日

  東海福音ルーテル教会準備委員会

委員長 河島亀三郎

    記

一、        日時 自昭和三五年七月九日

午前九時至十日午後四時

一、        場所 静岡市音羽町二二二番地 於・静岡福音ルーテル教会

一、総会順序 別紙

一、諸注意事項

()総会通知にそえて (別記)

()教会代議員について (別記)

()一つのお願い (別記)

 などよくごらんになり、報告事項は期日までに必ず届くよう。お取り討い下さい。」

こうして、創立第一回総会は静岡教会にて、午前九時十五分からの開会礼拝(説教・岸井敏)をもって開催された。

正議員五十四名中、四十二名出席。その内訳は教師十六名、信徒二十六名、準議員7名であった。

総会の主な議事が次のように順序で審議されていった。

一、河島準備委員長挨拶

二、組織

三、総会諸委員の選出

四、各個教会の現住陪餐会員数の報告

  東京50 板橋21 

本郷27 湯河原20

沼津31 富士28

静岡71 焼津31

島田25 菊川 9

掛川 8 浜松56

湖畔 4 豊橋42

田原 9 岡崎23

刈谷23 半田39

常滑 9 恵 61

柴田21 

五、憲法規則の承認

六、1960年度度追加予算案承認

七、選挙

  実行委員(後常議員と改称)

  長・河島亀三郎

  副・ハイランド

  書記・岸井敏

  会計・市山貞一

  各部

伝道部長・大柴俊和

部員 中島誠、中島費次、池田政一、ネルソン、ジョンスルード

教育部長・バーグ

部員 田代久、蔵元敏子、岸井敏、アーモット、ミッチエル

財務部長 伊藤武雄

部員 岸野博、浜田光行、タング、ギルバートソン

社会厚生部長 サノデン

部員  渡辺武、阿部長治、ピーダセン、ホマスタッド

  会計監査委員 石川文一郎、犬飼通之 阿部晴夫

  結婚委員 鈴木雅子、伊藤忠男  浜田光代

 新たな教会の事務所は引続き東海ルーテル聖書学院内に置くこととした。その事務職員には高津和子を嘱託として採用し、その振込口座番号は「東京一二四三九」を設けた。

これと共に、宣教師会でも内部の行政組織を新に確認し、次のように新役員を決めた。

宣教師会長 ソレンソン

  副会長 ホマスタッド

  書 記 ワング

  会 計 スエンサイド

  歴史係 クヌートソン
    無 任 ボー・ランド、ハンソン 

一九六〇年は日本の教会だけでなく、アメリカのルーテル教会の動きとしても、新たな一つの時代の開幕を告げる、きわめて象徴的な年となった。

宣教師の派遣母体で、ノルウェー系福音ルーテル教会 (ELC)はアメリカ国内で、オハイオ洲コロンバスに本部を持ったドイツ系アメリカ・ルーテル教会(ALC)、デンマーク系ルーテル教会(UELC)及びノルウェー系ルーテル自由教会 (LFC)が合同して、アメリカルーテル教会(The American Lutheran Church、会員230万人)と改名した。それに併せて、宣教師会の名称変更及び土地登記の名義もそれに従って、十二月十二日付で完了した。

 補足すれば、二年後の一九六二年には、一八九二年から日本福音ルーテル教会に宣教師を派遣しているドイツ系の北米一致ルーテル教会(ULCA)とスウェーデン系アウガスタナ・ルーテル教会(Augustana)の両教会は、デンマーク系のアメリカ福音ルーテル教会(AELC)とフィンランド福音ルーテル教会(SUOMI)の賛同を得て、一九六二年大合同が実現し、The Lutheran Church in America(LCA、会員320万人) が誕生した。

 こうして、ミズリーシノッド(LC-MS会員240万人)を加えると、アメリカに三つの大きなルーテル教会のグループが形成されたことになった。

 ここで触れておくと、アメリカルーテル教会に統合される以前の各々教会の海外伝道地は以下の通りであり、これらを新たな教会は宣教師の派遣も含め海外伝道を引継ぐこととなった。

 ドイツ系アメリカ・ルーテル教会(ALC1930-60)  インド、エチオピア

 ノルウェー系福音ルーテル教会 (ELC、1917-60)  台湾、香港、マダガスカル、

南アフリカ連邦、カメルーン、コロンビア、ブラジル、メキシコ、日本

 デンマーク系ルーテル教会(UELC)    日本、インド

 ノルウェー系ルーテル自由教会 (LFC) マダガスカル、台湾、香港、日本

 さらに付け加えると、一九六二年合同が実現し、The Luthera Church in America(LCA)に統合に加わった教会の海外伝道地は次のようであった。

 ドイツ系北米一致ルーテル教会(ULCA、1918-62)  アルゼンチン、ガーナ、香港、インド、リベリア、マリー半島、ウルグワイ、日本

 スウェーデン系アウガスタナ・ルーテル教会(Augustana1860-1962)  インド、台湾、香港、タンザニア、北ボルネオ、ウルグワイ、日本 

 デンマーク系のアメリカ福音ルーテル教会(AELC、1872-1962

 フィンランド福音ルーテル教会(SUOMI、1890-1962

 インド、日本